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投稿者:wawa

アルテミアの孵化水

アルテミアの培養方法は弊社販売サイトに於いて提供している無料の情報リソースへまとめていっていますのでより詳しくご覧になりたい方はこちらをご覧ください。(2022/9/5追記)

アルテミアの孵化に関しては粗塩または人工海水を用い塩分濃度「2~3%の海水」を使うことが一般的であると思います。

しかしアルテミアの多くは世界各地の塩湖に生息し塩湖の組成は塩類の濃度や比率がそれぞれ独特です。

アルテミアの孵化水が「塩分濃度」や「海水」と画一的に表現される背景には粗塩または人工海水といった既成のインスタント海水に頼らなければならない現実がある一方でアルテミアの起源が海にあることや体液組成が原始地球の海水組成に似ていることがあるのではないかと推測します。

またこの「2~3%の海水」を基準にアルテミアの卵殻が浮上するタイプか懸濁沈下するタイプかを判定しますがArtemia monicaを除くアルテミアの卵殻はすべて水面に浮上する性質を有することから生息する塩湖の塩分濃度を推測する重要な鍵となります。

養殖されるアルテミアは移植株が多く研究に基づき塩田で計画的に生産されることが多いのではないでしょうか。

近年ではより効率的な養殖を目的として浸透圧調整ストレスを低減した低塩分濃度の飼育水が研究され水産業界で支持され始めています。

アルテミアの耐久卵は長期乾燥に耐え再び塩水に晒されると孵化する特徴を持ちます。この人工飼育水の概念をアルテミアの孵化水に応用すれば効率的な浸透圧調整により孵化時間の短縮、孵化率の向上そして低コストな孵化が実現されるのではないかと考えました。(孵化時間の短縮、孵化率の向上は孵化の同期と密接な関係があります)

そしてアルテミアのみならずミジンコやホウネンエビの耐久卵の孵化への応用も可能ではないでしょうか。

※ミジンコなどの甲殻類専用の孵化水は存在しますので近々触れることにします。(2022/1/10追記)

またこれらの飼育水は一般的に安価に入手可能な元素を任意に調整することが出来るためそれぞれ生息地の組成の異なるアルテミアに適した環境を作り出すことが可能です。

通常高塩分濃度によるアルテミアの養殖が低塩分濃度による陸上養殖として実現する可能性も十分考えられます。

人工飼育水と言うと学校法人加計学園が特許を保有する「好適環境水」と株式会社関門海が特許を保有する「養殖魚用の人工飼育水」が有名です。

※塩化物泉(温泉の泉質の一つ)を使いトラフグ養殖を行っている株式会社夢創造という会社もあります。(2021/2/24追記)

好適環境水と言えば真水にナトリウム、カリウム、カルシウムを最低限添加した飼育水として知られることが多いですが養殖対象となる生物に合わせて飼育水を希釈や濃縮または別の元素を添加することが本質であるように感じます。

一方で株式会社関門海が特許を保有する「養殖魚用の人工飼育水」は複数の養殖魚の血液の浸透圧を測定し、その平均値と等しい浸透圧を人工的に再現したものです。

今回この二種類の人工飼育水を用いて中国渤海湾産のアルテミア(仮にArtemia franciscana BHBとしておきます)とチベット産のアルテミア(Artemia sinicaと推定。以下、大紅卵と呼びます)で孵化実験を行いました。

観察の結果「好適環境水」、「養殖魚用の人工飼育水」ともに良い結果を確認することが出来ました。

孵化時間は短縮できたような気はしますが塩分濃度の低下により浮力が小さくなり沈卵が増えたため孵化率の違いまではわかりませんでしたが満足いく結果でした。

沈卵が増えるため底部が丸型かV字の孵化器と専用の分離アミがあると便利です。

大紅卵にとっては株式会社関門海が特許を保有する「養殖魚用の人工飼育水」の方が適している気がします。

これは中国の塩湖には塩化マグネシウム系、硫酸マグネシウム系の塩湖が多いからと考えます。

単に孵化だけを目的とするならば効率的な浸透圧調整が行え、より安価な好適環境水でも可能かもしれませんがちょうど飼育不可と言われる大紅卵の飼育に成功したところでその内容からナトリウム、カリウム、カルシウムのみで再現した好適環境水では飼育が出来ないことがわかっていました。

成長した雄を除くアルテミアは濾過摂食ですが水中の元素からも栄養を得ているのではないかと考えます。

また好適環境水で甲殻類の種苗生産を行うには成分調整の必要があると特許にも記載してあります。

※1970年代に存在した人工海水の成分表を発見し好適環境水と比較したところ3%(水1Lに対し人工海水35g)で作った人工海水に対し水で1:4で希釈した孵化水を用い孵化することも可能であると考え超細卵にて孵化実験を行いました結果正常に孵化することを確認しました。水1に対し人工海水7g相当量になるかと思います。(2022/1/10追記)

低塩分濃度による大紅卵飼育

アナカリスで給餌する大紅卵