日本のアクア業界においてはアルテミアは孵化直後のノープリウス(1令幼生)が栄養価に優れているというイメージが強いようですが、実はノープリウスより成長したアルテミアの方が栄養価は優れています。
FAO(国際連合食糧農業機関)によるとタンパク質含有量、特に必須アミノ酸が豊富とあり(注1)、また成長したアルテミアに含まれる生殖ホルモンはクルマエビ科のエビのホルモン活性に影響を与えるようです。(Naessens et al., 1997).
故に海外においてはアルテミアバイオマス活用の研究が盛んに行われています。
ベトナムのカントー大学水産学部で2018年に行われた実験では、アルテミアの餌として藻類以外に人工飼料を加えると、生存率が高まり成長が改善されアルテミアの繁殖が促進されることが証明されました。
この実験は藻類100%から10%、20%、30%、40%の人工飼料を加えた5つのパターンの比較で行われ人工飼料10%で最も高い生存率(100%)、40%で最も高い成長率と生殖パラメーターを持つことが確認されました。
異なる餌の併用で栄養改善が行われ成長や機能向上に寄与したと考えられます。
人工飼料は通常米ぬかやふすまなどの食品廃棄物が使われますが飼育下においては観賞魚やエビ用の飼料で代用する方が楽ではないでしょうか。
この時大事なことは食物粒子をアルテミアが摂食しやすいサイズにフィルタリングしてやることです。
成長した雄を除くアルテミアは濾過摂食(注2)で適正な餌の範囲は1~50μmと言われています。 (D’Agostino, 1980; Van Stappen, 1996; Dhont and Sorgeloos, 2002).
またFernández(2001)は、アルテミアの飼料の大きさは6.8〜27.5µmの範囲で最適値は約16.0µmとしています。
また、フィルタリングすることで摂取出来ないサイズの餌の混入による水質汚染も予防できます。
(注1)FAO(国際連合食糧農業機関)のHPには一部誤記があると思います。
著者の勤務するベルギーにあるゲント大学へメールで問い合わせをしましたがまだ回答はありません。
(注2)エクアドルで養殖中の雄のアルテミアの消化管から養殖タンクで発生したオオバアオサの一部が発見されたことから交尾の際に雌を捕まえる第2触角が剪定バサミのような機能を果たすことが確認されています。
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