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両生類とビタミンA

X投稿より

両生類のサプリメントとしてはカルシウム、ビタミン、枯草菌、乳酸菌、酪酸菌を使用しています。
ビタミンはビタミンAのアプローチが異なるテトラ レプチゾルとGEX EXO TERRAマルチビタミンを併用しています。
今回はビタミンAについての重要な内容となります。

動物はプロビタミンAカロテノイドを自ら合成することができませんので食事から摂取する必要があります。
両生類は体組織からβ-カロテンなどカロテノイドが検出されていますがβ-カロテンをビタミンAに変換し利用することができるのかどうかはわかっていません。

いくつかの研究でβ-カロテンを分解できないことが推定され、いくつかの研究でβ-カロテンの繁殖率への有効性または分解利用の可能性が推定されています。
そのため両生類にはβ-カロテンだけでなくビタミンAを含むサプリメントを併用し与えることが望ましいと考えられています。
ただし、ビタミンAは脂溶性であるため主に肝臓に蓄積し過剰症となる場合がありますので与えすぎには注意する必要があります。
また、ビタミンD代謝を妨げることから代謝性骨疾患と関連づけられることもあります。

一方、β-カロテンなどのプロビタミンAカロテンは必要な分だけが小腸で酵素によりビタミンAに変換されますので過剰摂取はないとされています。
注)上記のように両生類のβ-カロテンのビタミンA変換はエビデンス不足です。

ビタミンAは細胞の成長、分化に関わる重要なビタミンですが飼育下に於ける両生類の主要な餌となる昆虫食ではビタミンAは不足するといわれています。
ビタミンA欠乏症の代表的な症状に短舌症候群(STS)があります。
これは両生類が獲物を捕らえることが下手になる様子から舌が短くななったと考えられたため名付けられましたが実際に舌が短くなるわけではありません。

まず、両生類の捕食メカニズムをカエルの例で説明します。
カエルの捕食はネズミの脳と同等の柔らかさを持つ舌と特殊な性質を持つ唾液の組み合わせで成り立っています。

カエルの唾液は二相粘弾性流体と呼ばれる非ニュートン性流体で唾液に加わるせん断応力によって粘性と弾性の性質が変化します。
具体的には普通の状態では唾液は粘りと弾力がありますが舌が獲物に到達すると舌を押し出す圧力により唾液は水のように流動的に変化し獲物の体の隙間にくまなく流れ込み獲物を包み込みます。流れ込んだ唾液は圧力から解放されることで再び濃く粘性を帯びた状態に戻り獲物は逃げることができなくなります。カエルが獲物を口内へ戻すと次は目の下がる圧力により再び唾液が液体に変化し獲物が舌から離れることで飲み込むことができます。

人の舌は重層扁平上皮という角質化する粘膜で覆われていますがカエルの舌は粘液を産生する細胞を含む非角化上皮で覆われています。
ビタミンAが欠乏すると複数の臓器で細胞変化が起こることがありますが舌が影響を受けると正常な細胞が角質化する扁平上皮細胞に置き換わる変化が確認できます(扁平上皮化生)。

扁平上皮化生が重層化すると唾液腺が完全に塞がれるとこで唾液の分泌が止まり両生類は餌を捕まえて食べたくても餌を摂取することが困難になり体重減少や無気力状態に陥りやがて衰弱し死亡します。

この短舌症候群は1〜2種類の昆虫のみを与えられている場合に特に発症しやすく潜在的に問題を抱えている両生類は多いと言われています。
例えば回転率の悪いショップでコオロギだけを長期間与えられているような例が該当します。
尚、扁平上皮化生が腎臓で発生する場合は皮下リンパ嚢や体腔内の体液貯留による浮腫症候群が見られるようになります。

最後に注意点としてテトラ レプチゾルにビタミンB12が含有していると記載している販売サイトが非常に多いですがこれはニコチンアミド(ビタミンB3)の間違いです。
2年前にスペクトラムブランズジャパン社へ指摘したことがありますが本家サイトの表示が一部訂正されたのみです。

ビタミンB12が欠乏すると免疫系が損なわれますがビタミンB12 は腸内細菌によって生成されますのでプロバイオティクスで腸内環境を整えるようにしています。
また昆虫にはビタミンB群が多く含まれています。

※小動物へのサプリメントは用法用量を守って正しくお使いください。
特にオタマジャクシ、幼生、幼体に使用する場合やビタミン添加された人工飼料を与えている場合は逆効果になる場合もあります。

投稿者:wawa

蚕の起源

X投稿より

草食昆虫は単食性か寡食性あるいは狭食性が多く餌の調達が困難になることがあります。
しかし宿主植物によっては毒性の高い二次代謝産物を生産するものが存在し毒性を摂取した昆虫が天敵に対する防御手段としてリサイクルすることになりますので餌料生物として草食昆虫を育てる場合は代替飼料が必要になる場合があります。
※寡食性:狭食性の一種で特定のグループの動物や植物のみを食べる食性のこと


草食昆虫は排出、貯蔵、解毒(酵素や共生微生物)といった方法で植物が生産する防御物質に適応する進化を遂げてきました。
例えば、日本では餌としては馴染が薄いスズメガの幼虫でホーンワームと呼ばれる餌料昆虫は主にタバコスズメガ(Manduca sexta)が流通していますが摂取したニコチンをCYP6B46遺伝子により中腸から血リンパに通過させて気門から毒霧として放出する機能を備えており天敵から身を守る手段になっています。
故に海外ではホーンワーム用の人工飼料が販売されていますがこれらを与えた場合カロテノイド不足により体色が青緑に変化することがあります。


同じカイコガ上科ではカイコがシルクワームとして主にカメレオンなどの爬虫類の餌として使われています。
人間の健康食品としても知られる桑の葉を食べるカイコにも草食昆虫としての解毒機能がきちんと備わっています。
一説によると当初養蚕は桑ではなくハリグワ(針桑)を用いていたと言われており現在でも四川省の農村部ではハリグワの柔らかい葉でカイコを育てる習慣が残っているそうです。
ハリグワで育てられたカイコの絹は桑で育てられたカイコの絹よりも風合いが良く、色も鮮やかで非常に丈夫であることが知られています。
1637年(明の崇禎帝10年)に宋応星が編纂した科学技術書の「天工開物」にはハリグワで育てたカイコを「棘繭」と呼び琴弦や弓弦に適していると記載があります。


このハリグワにはプレニル化イソフラボンが多く含まれていますが、カイコの糞便中からはグリコシル化誘導体が検出されることから腸内細菌叢により代謝解毒されていることが判明し、特に枯草菌(Bacillus subtilis)をプロバイオティクスとしてカイコに与えると成長と発達が促進できることが示唆されています。
通常カイコは桑の葉を用いることが多いですが腸内細菌叢の存在が重要であることがわかります。

餌料生物としてのカイコは比較的高価な餌と言えますが餌の調達コストに原因があることは言うまでもありません。
5齢カイコの体重は蟻蚕(初齢)の10,425.53倍、体面積は520倍まで成長します。 1匹のカイコが食べる桑の量は生の桑の葉で約21グラム(乾物5.25グラム)と言われていますが、そのうち85〜88%を5齢カイコで消費すると言われています。
5齢カイコの体重は4齢カイコの4.08倍、体面積で2.24倍と加速的に成長しますが主に体内の絹糸腺という器官が急速に成長しているためで絹の材料を生産するための粗タンパク質を吸収しています。
最終的に絹糸腺は蟻蚕と比較し体積で16万倍に達します。
また桑は落葉樹であるため通年採取が不可能になります。

草食昆虫の多くは臭覚受容体と味覚受容体によって餌を認識していると言われています。
カイコの餌の選択には苦味受容体遺伝子GR66が大きな影響を与えることが判明しておりこの遺伝子が突然変異を起こすとカイコは桑以外の植物の葉やリンゴなどの果物を無差別に食べることがわかっています。
とは言うものの食べ物により絹質へ与える影響も懸念されることから広食性のカイコが実現化されるのはまだ先のことではないでしょうか。


絹産業として見た場合カイコには革命的な人工飼料が存在します。
「ヨード卵・光」で知られる日本農産工業株式会社(NOSAN)の「シルクメイト」によりカイコの全齢飼育が通年可能となっています。
カイコの餌は飼料安全法の対象とはなりませんがNOSAN社が飼料メーカーであることから飼料安全法に準じた管理がされていると推定できます。 特に飼料及び飼料添加物の表示がされている点は飼料業界のリーディングカンパニーとして称賛に値すると考えます。
メーカーHPの製品の紹介によるとシルクメイトシリーズには飼料安全法の基準に準じたと思われる飼料添加物として防腐剤及び抗生物質が添加されていることがわかります。


カイコ(Bombyx mori)はクワコ (Bombyx mandarina) から完全に家畜化された昆虫で品種も多岐にわたるため細菌感染に弱い品種も存在すると思われますので産業面から捉えれば安心して使用できる飼料と言えますが餌料生物の餌として捉えればこれらの飼料添加物は気に掛かる存在と捉える方も少なくないのではないでしょうか。
この場合次の対応が考えられます。

1.そのまま使い続ける 自己責任に於いて枯草菌を添加しても良いかもしれません。

2.自分で人工飼料を作る

参考までに当店で作るレシピを紹介しておきます。 応急的にしか作りませんので少量となっています。 量や加熱時間は適宜調整してください。 桑の葉(桑の葉茶)のみで作る時は水量が多くなります。 材料は無農薬などのヒューマングレードになりますが小動物にとってヒューマングレードが良いとも限りません。 ただし、現実的にヒューマングレード以上のものは入手が困難になります。

【3分でできるシルクワームフード】

材料(大葉一枚相当分)

桑の葉100%パウダー 5g

きな粉        4g

コーンフラワー    1g

水         25ml

必要に応じて餌料酵母やビタミン、枯草菌を追加してください。

作り方
1.桑の葉、きな粉、コーンフラワーをよく混ぜ水を加えて良く練る。

2.電子レンジで約1分加熱して完成しますので冷ましてご使用ください。

3.ブランチングした冷凍桑の葉をストックしておく(おすすめ)

※ブランチングとは、野菜や果物などを短時間加熱し冷凍保存によって活性化する酸化酵素を不活性化する調理法です。

方法

1.桑の葉を100℃の熱湯で30秒湯通したのち素早く引き上げ冷水で冷まします。

2.葉を一枚ずつタオルなどに並べ乾燥させる。

3.ある程度乾いたらチャック付ポリ袋へ適量毎に分けて冷凍保存する。

参考

TOSHIO OHNISHI, Freezer storage method for mulberry leaves pretreated with boiling water, The Journal of Sericultural Science of Japan, 1986, Volume 55, Issue 2, Pages 137-142, Released on J-STAGE July 01, 2010, Online ISSN 1884-796X, Print ISSN 0037-2455, https://doi.org/10.11416/kontyushigen1930.55.137…, https://jstage.jst.go.jp/article/kontyushigen1930/55/2/55_2_137/_article/-char/en…,

最後にカイコ(蚕)と養蚕の歴史に触れておきます。
養蚕の発祥地は中国で日本には弥生時代に伝わったと言われています。
世界最古の絹は山西省夏県西陰村の仰韶文化遺跡で発見された5,000年から6,000年前の蚕繭で、鋭利な刃物で17%人工的に切断されていることから食料か占いの道具ではないかと推定されています。
養蚕は先ず食料調達として始められ、後に絹糸の利用が始まったと言われています。 古代シルクロード南部の重要な結節点であり養蚕で栄える四川省凉山州にプーランミ(カタカナチベット語は的確でない可能性あり)と名乗るチベット族部落があり、これはチベット語で「蚕を好んで食べる人」という意味だそうです。


糸を吐き続け完成させた繭から妖精の姿に生まれ変わり天へ飛び立つ完全変態の様は、古代人にとって単なる家畜ではなく神格化された存在であったことは天 + 虫から表された「蚕」の字から容易に想像でき、蚕を食べることで神の力が体内に宿ると信じていたのかもしれません。
また幼虫組織の細胞死と成虫組織の再構築を守る美しい繭の存在は死の棺であると同時に再生のゆりかごを意味し、絹に一層深い想いを託すことができたのではないでしょうか。
そして長期に亘り絹を身につける特権は皇帝や貴族だけのものでした。
(蠶の漢字の成り立ちは大量に紡いだシルクのお団子頭という意味)

この半繭は1928年にワシントンのスミソニアン博物館に持ち込まれBombyx moriの祖先と証明されました。
これについては後世で混入したのではないかという意見もありますが、約6,000年前の仰韶文化初期の師村遺跡からは石刻の蚕繭が発見され、浙江省湖州市呉興区の銭山漾遺跡をはじめいくつかの遺跡から養蚕や絹織技術の形跡が発見されています。
これは北宋の劉恕が書いた「通鑑外記」のなかで黄帝の正妃である嫘祖が人々に養蚕を教えたとされる伝説と時期や場所(黄帝は山西省南西部で蚩尤と「潞塩」を巡る争いをした)が一致しています。
また2019年、河南省滎陽市の仰韶時代の汪溝遺跡からELISA(酵素結合免疫吸着測定法)により発見された絹織物の残骸が約5,500年前のものであるとされたことから専門家の間では絹織物の起源は約5,500年前であると考えられています。

投稿者:wawa

ピンクバッタ

X投稿より

ピンクバッタの個体群です。
遺伝子変異により黒いユーメラニンが欠如し、赤いフェオメラニンが増えるエリスリズム(赤髪症)と呼ばれています。
バッタは相変異を起こすLocust(Grasshopperに対して大量発生し農作物を食い荒らすバッタの通称です)に代表されるように環境条件に応じて形質を変化させる能力(表現型の可塑性)が優れていますので個体群密度や周囲環境の色や温度、リスクヘッジとして基本色以外の体色に変色することがあると言われています。
ここで言うリスクヘッジとは、例えばバッタを食べる捕食者が緑色のバッタを美味しいと認識したならば長期的に緑色のバッタは捕食者に食い尽くされてしまうかもしれません。
通常自然界で目立つ体色は発見され易く不利であると言われますが生存戦略の一環として基本色と異なる体色に変化するとことで生き残ることができるのではないかという「賭け」にでることがあるようです。
体色に関わる表現型の可塑性については脱皮により変色することがありますが我が家の個体群はピンクで固定していますので親から引き継いだ遺伝子変異であると言えます。
人の一生でピンク色のバッタに遭遇する確率は1%と言われています。
累代でピンクの個体を残せると良いと思います。

投稿者:wawa

飼料のお話し

X投稿より

家畜や養殖魚用の「飼料」をペットやペットの餌となる小動物の餌に用いる例は多く見られます。
食卓に上るまでの育成を前提とする家畜や養殖魚(家畜等)と終生飼育または繁殖を目的とするペットとは飼育目的が異なる点を忘れてはいけません。 飼料添加物の残留基準については食品衛生法に基づくため人間が家畜等を摂取しても健康を損なわない量として設定されており小動物が対象でないことに留意して使用する責任があります。
飼料については飼料安全法(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)に定めがあり成分規格や使用できる飼料添加物が決まっています。
飼料添加物とは飼料安全法施行規則で、 ①飼料の品質の低下の防止 ②飼料の栄養成分その他の有効成分の補給 ③飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進 と用途が定められており、②のアミノ酸やビタミン、ミネラルが広く知られていますが、①の抗酸化剤や防かび剤、③の合成抗菌剤や抗生物質(抗菌性飼料添加物)なども含まれています。
厳格な基準が存在することから多くの飼料に飼料添加物が含まれているのではないでしょうか。
また飼料安全法の対象とならない餌類でも準じた製法で作られているものが存在します。
表示に関しては飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の別表第1に定めがあり飼料添加物の名称及び量が記載されることになっていますので内容を確認しておくことが重要です。
残留基準についてはポジティブリスト制度に基づき残留基準が個別に設けられたものや一律基準値(0.01ppm)以下と定められたものがありますが、あくまで人間のADI(一日摂取許容量)が基準となっています。
尚、アミノ酸やビタミン、ミネラルはポジティブリスト制度の対象外となっています。
これらの飼料添加物を使った飼料や餌類をペットに与える場合、常在菌が弱ったり死滅することで生体バランスが崩れる可能性や、長期投与による耐性菌の増加など一定のリスク管理が必要になると考えられます。
特に免疫に関わる乳酸菌は薬剤に弱いことから積極的な補充が望ましいとも考えられますが乳酸菌の連続投与は腸壁を薄くするなどマイナス効果の指摘もあります。
小動物は人間ほど腸内細菌叢との共生関係が複雑ではなく、そもそも定着が困難である可能性があります。
生体にとって益菌とされるものには一定の薬剤耐性を持つものがあり併用して使用することが望ましいと考えられます。
一般的には酪酸菌や枯草菌が環境に対する耐性が優れていいることから乳酸菌と併用して使用され、人間用の生菌製剤にも3タイプの益菌を有効活用した商品が存在します。
またこれらの益菌は腸内で酸素濃度の比較的高い前腸(人間の場合は小腸)に枯草菌、中程度の中腸(人間の場合は小腸~大腸)に乳酸菌、酸素濃度の低い後腸(人間の場合は大腸)に酪酸菌と住み分けをし、それぞれの増殖を助ける役目も果たしています。

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アカハライモリの学名の由来

X投稿より

Cynops pyrrhogaster は言わずと知れたアカハライモリの学名です。
Pyrrhogasterは、ギリシャ語のpurrhos(赤い、火)とgastēr(腹 )に由来しておりアカハライモリの特徴を捉えています。
Cynopsについてはギリシャ語 cyon (犬) とops(目、顔、表情)から「犬の顔」を由来とする解釈がありますが私はこの説は支持しておらず、『水棲イモリ』と解釈しています。
アカハライモリは1826年に日本から持ち込まれた『標本』に基づきドイツの動物学者Heinrich BoieがMolge pyrrhogasterと分類したのが始まりです。
比較対象となった現在の『陸棲イモリ(繁殖期は水棲)』であるスベイモリ(Lissotriton vulgaris)の同属別種に該当します。
その後1838年にスイスの博物学者Johann Jakob von TschudiによりCynops属に分類されました。
ここからは全くの私見となりますがCynops属の由来について考察してみます。
古代ローマの著述家、博物学者、ローマ帝国の海・陸軍司令官などの肩書を持つGaius Plinius Secundus(通称大プリニウス)が著したNaturalis Historia(博物誌)に答えが隠れていると考えています。
現在ではハーバード大学出版局が翻訳した電子文書を読むことができます。
全37巻からなる博物誌の第8巻から第11巻の『動物学』の中で『魚類』について書かれたパートがありますが魚類以外の水棲動物の記述も多いことから一般的には『海洋動物(marine animals)』として扱われています。
その中にCynopsの記述がありますが対応する生物種がunknown(不明)となっています。
このことは後世に於いて未知の水棲動物の名付けを行うえでCynopsが有力な候補となった可能性があったと考えられます。
前述のとおり標本のアカハライモリは『陸棲イモリ』であるスベイモリと同属に分類された経緯がありますが生きたアカハライモリは『水棲傾向が強い種』と観察することができます。
このことから新属の設立の際に水棲生動物を表すCynopsが使われたのではないかと推測します。
尚、大プリニウスは西暦79年に起きたベスビオ火山の大噴火の際に友人とその家族を助けようとして生涯を閉じたと言われています。
大プリニウスの意味したCynopsが何であったのか知ることはできませんが、アカハライモリの学名が『赤い腹の水棲イモリ』ならしっくり来ませんか?

投稿者:wawa

オタマジャクシのしっぽ

X投稿より

オタマジャクシのしっぽは吸収され絶食期のエネルギー源となると言われますが成体器官の出現と幼生器官の消失といった有尾から無尾への変態のクライマックスシーンが急速に展開されますので観察すると興味深いです。
アポトーシス(プログラムされた細胞の死)のプロセスにより尾の消失が始まりますが死んだアポトーシス細胞は主にマクロファージの貪食作用により処理されます。
マクロファージは免疫細胞として細菌やウィルスなどの異物を食べるだけでなく抗原提示細胞として他の細胞に異物の情報を伝達する役目もありますので尾の吸収が始まりやがて終了したという情報も伝達されて変態に大きく影響するのではないでしょうか。
一般的に前肢が確認出来ると上陸を意識しますが私は上陸を「待つ」のではなく水深を浅くしたり容器を傾けたりして「促す」ようにしています。
変態のクライマックスに於いては尾や口といった外見の変化だけでなく肺や腸など臓器の変化もドラスティックに起こります。
また、皮膚の色素胞の構造変化もこの時期起こりますので一般的なアマガエルなどは体色が緑色に変化します。
水中から早めに出すことで一気に変態が完了するのではないかと考えています。
オタマジャクシの頃と異なり餌を食べ出すと生き餌の調達が大変になりますが食べてくれると安心します。
ちなみにオタマジャクシはコプロファジーと言って糞食性なので綺麗に掃除しないことがポイントです。
動画は上陸させて2時間程度の変化をまとめています。
僅かな時間でカエルらしさが出て来たと思いませんか?

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釣り餌から流用される生き餌

X投稿より

釣り餌から流用される生き餌、産業として輸入される主に飼料用昆虫の話しです。
生き餌の条件としては栄養価値はさることながら持続的に生産または収穫可能であることが重要です。
近年は餌の養殖業者や特に個人レベルの各種ブリーダー等の尽力があり多くの生き餌の調達に事欠かなくなっています。
国内自給が完璧であれば申し分ありませんが一部の生き餌については輸入に頼ることになります。
安価な釣り餌から流用される生き餌が多く、例えば嗜好性は非常に高いものの高脂質であるために腸管の蠕動運動を亢進させ水分吸収不足による下痢の原因となることがあるために常時与えてはいけないハニーワーム(Galleria mellonella,Achroia grisella)は繭無し加工という利便性を看板に、幼虫として日持ちがすることも利点となりブドウ虫の代替として取り扱われてきました。
最近は加工方法に安全性を疑う声が多く加工無しのハニーワームが数多くのブリーダーにより養殖され流通しています。
一般的に幼若ホルモンによる繭無し加工が指摘されていますがこれは昆虫の変態が幼若ホルモンと脱皮ホルモン(エクダイソン)のバランスで制御されており幼若ホルモンを投与することで幼虫の状態を維持させることが出来るのだと考えることができます。
しかしコストや手間、ホルモンの作用持続時間について疑義があり他に効率的な処理方法があるのではないでしょうか。
低単価かつ無数の幼虫一匹一匹に注射を実施するとは考えられません。
魚については販売単価を上げる色揚げを目的として男性ホルモンが投与されることがあり強制的にオスに性転換させられた色鮮やかな魚が流通することもあるようですが効果は長期に及ばず騙されて買ったエンドユーザーのもとで復元することになります。
先述のとおり生き餌は持続的に量産可能であることが条件の一つになりますが、繁殖力と生命力の強さを持ち合わせる生物ということであり、人間や在来動植物にとって深刻な悪影響を及ぼす生物であると言い換えることが出来ます。
この点から植物防疫や外来生物の視点で捉えることが重要ではないかと思います。(法規制外で考える必要があるため「法」は敢えて消しています)
釣り餌はあらかじめ自然下で使用されることが約束されているので成長や繁殖が一切不可能な状態であることが要求されるはずです。
あくまで産業昆虫であり害虫としての状態で輸入されることがあれば産業として継続できなくなり国益に関わる事態となります。
害虫や細菌は野菜などの農産物や食品または材木に紛れて意図せず輸出されることがあり防除の目的で放射線照射処理を施す国が多く存在します。
日本食品照射研究協議会によると、「放射線は穀物や果実の殺虫手段として有効であり、約0.5kGy 照射すると害虫を不妊化や不活性化(卵のふ化の阻止、蛹の羽化の阻止など)することができる」と記載があります。
(引用:日本食品照射研究協議会,食品照射とは)
放射線被ばくにより不可逆的にDNA切断を引き起こすことで永久的に蛹化を防ぐことが出来るのではないでしょうか。
生き餌として忘れてはならない存在としてアカムシが挙げられます。
中国から釣り餌として輸入している中から多くが生き餌として流通しているのではないかと想像できます。
釣り餌として売られるアカムシの商品説明には年に2回脱皮すると記載があり一化性(1年に1回だけ発生すること)以上の長いライフサイクルが証明されていますが、蚊やハエを含む害虫の代名詞のような双翅目に属するユスリカのライフサイクルがこのように長いものかと疑問に感じることがありました。
信州大学の「諏訪湖地域におけるユスリカ成虫飛来に関する実態調査研究」によるとアカムシユスリカは1化性であると記載がありますがユスリカとしては種類が非常に多く、中国のアカムシ養殖の説明によると地域により差があるものの5月頃と9月頃に繁殖のピークが2回訪れ、卵は約2〜3日で孵化し、幼虫は蛹になるまで約4週間、その後約2日で羽化すると言われていますので約1か月のライフサイクルで多化性(1年に3回以上発生すること)である可能性が示唆されます。
それに対して生き餌として買ったアカムシが羽化してユスリカになったと言う話は聞いたことがなく、輸出の段階で蛹化防止の処理が施されているのではないかと考えます。
釣り餌の分野は実態把握が困難であると指摘されることが多く釣り餌を生き餌として使用する際には熟慮の上で使用しなければなりません。
日本はでは食品衛生法に基づき馬鈴薯の発芽防止を目的とした放射線照射のみが認められていますが、海外では多くの人間用の食品への放射線照射が行われています。
実験動物用の飼料への放射線照射を皮切りに安全性が確認されてきたものの飼料用昆虫は食品衛生法の対象にあらず、ブリーダーであれば照射飼料の摂取による二次的不妊の可能性も懸念する必要があるかと思います。
尚、鮮やかな色彩と柑橘系のフルーティな香りを放つことで魚や爬虫類などにとって嗜好性の高いバターワームとして知られるチリガ( Chilecomadia moorei )はチリの法律で輸出の際に蛹化を防ぐために放射線照射が行われることで知られています。

投稿者:wawa

水槽立ち上げ時に亜硝酸塩濃度が上がる理由

X投稿より

遅くなりましたが水槽立ち上げの硝化系統形成時にアンモニアが豊富に存在すると亜硝酸塩濃度が急上昇する理屈の私なりの回答をポストします。
その前にアンモニアについて少し説明しておきます。

脂溶性で細胞膜を通過し細胞毒性を持つアンモニア(NH3)は水中では水の水素イオンと配位結合し難脂溶性で毒性の低いアンモニウムイオン(NH4+)となります。
水素イオン濃度が高いと酸性が強くなりphは低くなります。
酸性度が高くなると毒性の低いNH4+が増えることになりますが、具体的にはNH4+のpKaが9.25なのでpH9.25の環境下でNH4+とNH3の量は等しくなります。(水温25℃の時)
魚類の生息環境はpH9.25より低い環境となりますのでアンモニア態窒素は大部分がNH4+で存在することになります。
魚の血中に於いても同様と言えますが総アンモニア量(アンモニウム + アンモニア)が多いことは良くありません。

硝化系統形成の初期に於いてアンモニアが多く存在すると亜硝酸塩濃度が一気に急上昇する理由としては以下のことが考えられます。
硝化作用に関わる硝化菌には化学合成独立栄養細菌としてアンモニアを亜硝酸塩に転換する亜硝酸菌と亜硝酸塩を硝酸塩に転換する硝酸菌の2群がありますがそれぞれ増殖スピードが異なります。
従属栄養細菌、真菌、放線菌なども硝化作用を司る微生物として存在しますが酸化効率は低いので省略します。
一般的に亜硝酸菌の世代時間は18分、硝酸菌は18時間と言われています。
細菌は世代時間毎に2倍2倍と増えていきますので1匹が24時間後に何匹に増殖しているかを比較してみましょう。

亜硝化菌:18分/世代
1,440分÷18分=80世代
2の80乗=1,208,925,819,614,629,174,706,176匹
硝化菌:1,080分/世代
1,440分÷1,080分=1.3世代
2の1乗=2匹

アンモニアを亜硝酸に転換させる職人は25桁まで増えているのに対し亜硝酸塩を硝酸塩に転換させる職人は僅か2人しか揃いません。
これではアンモニアという原材料が多く供給されれば有毒な亜硝酸塩という仕掛品として余剰在庫が増加する一方になります。
因みに25桁の数字は𥝱(じょ)や秭(し)と呼びます。
ラインバランスが整うまでの間アンモニアを排出する魚の数は最小限に抑える必要があるということがわかったと思います。

投稿者:wawa

ボヤキ

X投稿より

たまにはボヤキます。
今年は久しぶりに通販やヤフオク!で海水魚、淡水魚、両生類、甲殻類などを買いました。
暖房やらで乾燥が進む今の時期仕方がないのかもしれませんが海水魚の比重が1.027、1.028、1.029と高めが多い点が気になりました。
こういったステルス性時限爆弾付き発送は死着保証の対象にならず開封後の飼育者の責任となりますので到着時の簡易的な水質検査は必ず行うようにして、異常があればゆっくり時間をかけて水合わせを行いましょう。
私の場合は最大2~3日かけるようにしています。

また冬季の加温にはリスク回避のため水中投げ込み式のサーモ・ヒーター(特にヒーター)は使わず小規模・簡易的にでも温室構造を作ります。
昔はサーモとヒーターは離して設置することが常識であったと思います。
ベテランアクアリストや熱帯魚屋の大将、アクアメーカーのお偉方が子供の頃に夢中で読んだ熱帯魚の入門書にはそう書いてあったはずです。
近年はサーモ・ヒーター一体型が多く使われます。
サーモとヒーターが近接していると水槽全体の温度管理がずさんになるだけでなく、ON/OFFを頻繁に繰り返すことで耐用使用回数のカウントを早めたり耐用年数を短くするリスクが大きくなります。
例えば蛍光灯は一回の点灯で30分~1時間半程度寿命が短くなると言われています。
精度が高くなればON/OFが頻繁に繰り返されることになりますので多少の精度を落として作る必要があると思いますが、設定温度が一点固定という点も負担が上がる仕組みであると考えています。
サーモの中にはON/OFを二点で設定できるものもあり、例えば24度でON、26度でOFFと設定範囲に余裕を持たせることができるサーモを使い温室を管理します。
水は比熱容量が大きく「温まりにくく冷めにくい」性質を持つためある適度の水量があれば温室の温度変化の影響を受けることはほぼありません。

冬季の水槽管理は生体の生命に直接関わる事項が多いのでこの冬事故や不注意で魚を落としてしまった方は次の冬は同じ轍は踏まないようにように気を付けましょう。

投稿者:wawa

水産上理想的なC/N比

X投稿より

人工飼料に含まれる窒素(タンパク質 × 16%)のうち魚が吸収・利用できる割合は投入飼料のわずか20%に過ぎません。
ヨーロッパの研究で養殖サーモンの飼料に含まれる窒素の20%が直接水中に溶解し、残り80%が魚に摂取され、摂取された窒素の65%が内因性排泄、10%が糞便排泄され、僅か25%だけが魚の成長に使用されることがわかっています。(戴子坚;蔡春芳,2002)
つまり投入飼料 × 80% × 25% = 20%が魚の成長に利用され残りの80%は水域を汚染することになります。

多くの魚類の内因性窒素は鰓から、一部は腎臓から主に有毒なアンモニアとして排泄されます。
満々と水をたたえる大自然に鰓板のイオノサイトを介して有毒なアンモニアを効率的に排泄できる多くの魚類にとっては無毒な尿素に変える代謝経路は単にエネルギーロスを招く存在になるということかもしれません。
あくまで自然界での話です。

約20年前の研究なので飼料組成や養殖環境の改善により吸収率の向上が考えられる一方で、もてはやされる飼料については高タンパク質化が進んでいるのではないでしょうか。
吸収できる窒素には限界があり、過度な窒素は過度な有害なアンモニアとして魚類の体内を巡り水域へ排泄されるということ、非タンパク質(糖質、脂質)エネルギーが不足した状態だとタンパク質をエネルギーとして消費しアンモニアを生産するという無駄を招くということを覚えておくと良いと思います。

農業の視点から捉えます。
低窒素の有機肥料(高いC/N比)を土壌に施した際に土壌中の窒素が微生物に取り込まれ窒素不足による作物の生育不良が起こる状態を「窒素飢餓」と呼びます。
逆に高窒素(低いC/N比)の場合は残った窒素は土壌に排泄され栄養素として作物の生育に使われる利点があるためこの状態を問題視する言葉は存在しません。
あくまで農業での話です。

2つの話には関係が無いように思えますが魚の体内では腸内細菌群によりアミノ酸が分解されアンモニアが排泄されます。
魚類のC/N比は脂肪含有量により影響を受けるため多様性が高いですが一般的に魚肥料のC/N比は細菌のC/N比より低いことから細菌の窒素要求量は魚類より少なく炭素要求量が多いと考えられます。
それはつまり高タンパク質の魚用の飼料を栄養素とした腸内細菌が多くのアンモニアを排泄し宿主の腸に有毒なアンモニアが多く吸収されるということを意味します。
もっともアンモニア分解細菌の可能性や菌体タンパク質として利用される可能性もありますが尿素転換という解毒回路に依存しない魚類にとっては健康管理のうえで注意すべき点と言えます。
近年の研究からC/N比が10未満の場合、従属栄養細菌は有機窒素を優先的に利用するためアンモニア排泄が増加すると言われています。
具体的に飼料タンパク質含有量が30%を超えるあたりからC/N比は10未満になります。

また魚類には胃を持たない無胃魚が多く、胃を持つ魚に比べて消化・吸収に関し腸内細菌とより強い共生関係を持つと考えられます。
そして胃で殺菌されずに様々な微生物が直接腸内に運ばれてくるため日常の微生物叢のコントロールが健康管理の鍵になると言えるのではないでしょうか。

バイオフロック、中でも特に細菌フロックの視点から捉えます。
農業で理想とされるC/N比は20~30とされていますが、水産で理想とされるC/N比は15と低めになります。
これは土壌に於いては炭素源に事欠くことがありませんが、水中に於いては従属栄養細菌にとっての有機炭素源が不足しがちであるために細菌叢の構成が異なるためだと考えます。
事実バチルスや乳酸菌は中国の水産現場で活用される益菌の代表格ですがC/N比15を好むと言われています。
一般的に水槽内に於ける炭素窒素の供給源は飼料であるため水槽内のC/N比はかなり低く従属栄養細菌が活用できている例は非常に少ないと言えます。
このような環境は、底生珪藻、藍藻、緑藻、藻類、硝化菌中心のバイオフロック( + 水草)が形成されることになると思います。
特に底生珪藻(茶ゴケ)は初期に発生することからアンモニアを好むと考えられます。

ここで化学合成独立栄養細菌としての硝化菌についての問題です。
水槽立ち上げの硝化系統形成時にアンモニアが豊富に存在すると亜硝酸塩濃度は降下するでしょうか、上昇するでしょうか?
実際測ったことはありませんが理屈で考えると「急上昇」しなければなりません。
立ち上がるまで魚はパイロットフィッシュとして少しだけと知っている方は多いと思いますが、理屈を説明できる人は意外と少ないような気がします。
立ち上げなので還元菌や堆積物は関係ありませんので是非考えてみてください。
もともと水道に含まれていた、ということはありますが上昇する理由にはなりませんので正解ではありません。
私の答えは改めてポストするようにします。

ちなみにビブリオは日和見菌として位置づけられますが現実的には悪玉菌として捉えられることが多く特筆すべき点はC/N比10の環境を好むと言われていますので海水魚飼育の方は注意が必要です。

魚の餌と微生物との関係が強いということがわかっていただけたと思いますが与える飼料から不足する炭素量を計算することが可能です。
バイオフロックだけでなくプロバイオティクスとしても有効ですのでバクテリアマスターを目指す方は是非覚えてください。

台湾農業部水産試験所の資料によるとタンパク質含有量の違いによるC/N比は以下のようになります。(一部抜粋)
20%→15.6
30%→10.4
40%→7.8
50%→6.3
60%→5.2
粗タンパク質50%(C/N比6.3)の餌を100g使いC/N比を15に調整する場合は、(15 – 6.3)× 8g = 69.6gの炭素源不足が計算できます。
また、粗タンパク質40%(C/N比7.8)の餌を100g使いC/N比を15に調整する場合は、(15 – 7.8)× 6.4g = 46.08gの炭素源不足が計算できます。

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